ピアノを弾く〜人生70年の備忘録
18歳から25歳まで 引きこもっていた。
「引きこもり」という名前すらなかった大昔のことだ。
引きこもり直前、ちょくちょくベトナム戦争反対のデモに行っていた。
「ベトナムに平和を市民連合」通称「べ平連」の高校生べ平連チーム。
デモの後は喫茶店でソフトクリームを食べながら ああでもないこうでもないとたわいない会話で盛り上がる。
その時ふと思った。
ベトナムでは今、命がけの戦いが続いている。
私は呑気にソフトクリームを食べている。
なんかちょっと違うぞ…。
そうこうするうち父に見つかりこう言われた。
「市民の税金でできている高校に通いながら
世の中を変えようというのは 筋が違う。
本気で 世の中を変えたいのなら 学校を辞めて 革命家になりなさい。」
おっとっと…。でもごもっともだと思った。
が、学校は辞めなかった。辞められなかった。
で結局、革命家は諦めた。
随分と学校をサボリ映画や公園に行き、たくさん本を読み「ひとりフリースクール」状態だったがなんとか卒業できた。
その後 大学に行ったが 勉強の目的や人生の目的を見つけられず中退。結局引きこもってしまったのだった。
父のような「より良い世界を創るため仕事」と出会うことができなかった。
父は 北海道農業をより良くするために研究者として仕事をしていた。
その父がこう言った。
「人生は長い。30歳くらいまでに自分の方向性を見つけたらいい。すぐすぐ仕事をしなくても
世の中に 浪人の存在も大切だ。おまえが本を読む程度の応援はできる。」
いやいや30歳なんて…と思ったが 結局25歳まで 社会に出ることができなかった。
その間 本を読み、ピアノを弾き、ぼー〜っと考えていた。
「どうしたら戦争のない平和な世界になるのか？」
答えには なかなかたどり着けなかった。
そんな毎日、どれだけピアノに救われただろう。
たまたま 高校生の時に出会った、ジャズ研の大学生から、アメリカの「1,001」というスタンダードの譜面集(1001曲もの多くの曲集という意味らしい)をコピーさせてもらい ひたすら弾いてみた。
Cmaj7とかG7とかCaugとかのコードを頼りに、思いつく限りの勝手なアレンジで…。
スタンダードナンバーは なんて美しいのかと思った。その時だけちょっとわくわくした。
自分のピアノの音に癒されたのかもしれない。
たぶん 自分でも気づかない様々な感情を知らず知らず表現できていたのかもしれない。
感情の澱みのようなものが 一瞬スッキリする感覚。
すべてに無気力、無感動、無関心だった私だが
心は死んでいなかった。
一日は 長かった。
家族以外とは ほとんど人付き合いもなく たまにアルバイトに行っても 大人に構われて(いじられて)嫌気がさす繰り返し。
働くのは嫌いではなかったが 無遠慮な質問をしてくる大人が嫌いだった。逃げたかった。
70歳の今でもあの当時のピアノの音や聴いた音楽が時々蘇る。
豊かな音楽が溢れている時代だったなあ…。
そしてまたまた父の登場だ。
父が札響のオーボエ奏者を私に紹介してくれた。
たまたま家がご近所だったのだ。
Kさんはススキノのバーや ホテルのパーティーでピアノ弾きのバイトもやっていて
なんと私がお手伝いすることになったのだ。
「ああ、これならできるかも…」と思った。
あの当時のススキノのママたちやホステスさんそれはそれは人間力のある人がたくさんいたなあ…。
25歳から42歳まで 私を養ってくれた「街のピアノ弾き」という、バブル時代の徒花的な仕事のおかげで やっと社会と繋がることができた。ピアノが私を救ってくれた。
その後Slow Boatや Cafe toneというコミュニティとしてのお店をやっていた30数年間も
常にそばにピアノがあった。
あっという間の70年。
やっとこれから「世界を平和に、より良い世界に」と、わたしが決めた使命を ご縁で出会った多くの方々と果たしていけそうな気がする。
それもベトナムとのご縁まで用意されて…。
最後のピースが カチッとはまった。
そして今も「ピアノを弾く」ことは 私にとって自分を整え癒す時間だ。
写真は これから志をともに DXの民主化で
世界をより良くする私の同志です。
その名も ハッピー・トランスフォーメーション(HX)とOX(オバサン・トランスフォーメーション)プロジェクト。
